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Dec
21st
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米国というと、「弁護士が多い」「バカな訴えが通ってしまう」などといった訴訟社会のイメージがありますが、著者のコリン・P・A・ジョーンズ弁護士は必ずしもそれが正しくないことを解説しています。例えば、「弁護士が多い」という点については、確かにその通りだとはしつつも

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まず、日本と比較する場合だが、実は「弁護士」という用語を用いることには大きな語弊がある。何故なら、アメリカの弁護士が手がけている業務の範囲は、日本の弁護士のそれよりもはるかに広いからだ。

アメリカで「ローヤー」(Lawyer)の資格を持っている人々がやっている仕事をざっと並べると次のようになる。日本でいうところの弁護士に加えて、検察官と裁判官(いわゆる法曹三者)も含むところまでは、日本と同じである。しかしこれにさらに、行政書士、司法書士、海洋代理士、税理士、弁理士、企業内の法務担当者、一部の地方・国家公務員、一部の裁判所事務職員、タレント事務所のマネージャー等までもが守備範囲となるのだ。
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と、そもそもの言葉の定義について指摘しています(実はこの「言葉の定義」というポイント自体、米国の弁護士に特徴的な思考パターンの1つとして挙げられているのですが)。他にも国土の広さや法制度の複雑さなど、様々な背景があることが解説されているのですが、単純に「アメリカは弁護士が多くて不自然だ」と言えるわけではないということですね。

それからもう1つ。米国ニューメキシコ州のマクドナルドで、受け取ったコーヒーをこぼして火傷を負った女性が店側を訴え、約3億円の賠償金を得たという事件。細部を変えながらも「アメリカのバカさ加減」を示す逸話として耳にしたことがある方も多いと思いますが、その詳細というか「語られていない部分」について、こう解説されています:

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もちろん、単に女性がコーヒーで火傷しただけならば3億円も払う義理は無い。女性の治療費に少々のお見舞いを足せば済む。そしてアメリカの陪審員もそういう結論に文句を言わないだろう。ではなぜ、この件では懲罰的損害賠償金を課すことになったのだろうか。実は、裁判をしているうちにいろんな事実が明らかになった。原告を勝たせた主なポイントは、以下のような事実であったといわれている。

(1) M社は意図的にコーヒーを買ってすぐには飲めないような高い温度で保存していた。その理由は、高温で保存している方が香りが良く、客に「M社は上質なコーヒーを使っている」と印象づけるためだったらしい。

(2) この訴訟が起きるまでの10年間にわたり、M社はすでに数百件のクレーム(火傷を含む)をうけており、それまでに数十万ドルの和解金を支払っていた。それでも彼らはコーヒーの温度を変えようとしなかった。

(3) 女性が負った火傷は、1週間の入院と3週間の休職を要するほど重いものだった。それでも彼女は最初は裁判をするつもりはなく、直接M社に対して実質の損害賠償を要求しただけだった。しかし、その要求は大企業のM社に一蹴された。

(中略)

こうした理由で出されたのが、3億円の懲罰的賠償金という評決だった。この金額も、思いつきで出されたものではない。M社の2日分のコーヒー売り上げをベースに算定された金額だった。

最終的には火傷をした女性にも一部過失があったため、その過失についても陪審が認めて、損害賠償の金額はそれに見合って減額された。担当した裁判官もこの評決の額は大きすぎると思ったらしく、懲罰的賠償金額を5,000万円ぐらいまで減額した(刑事事件と違って、民事事件の裁判官は、陪審員の評決を無効にしたり変えたりする権限がある程度担保されている)。大幅に減額されたことは、当然ニュースにならなかった。
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長い引用になってしまいましたが、いずれにしてもマクドナルド側に「悪質」とも言うべき過失があったことと、最終的に金額が減額されたことなどは伝えられず、「コーヒーが膝にかかっただけで3億円」というインパクトの大きい部分だけが抜き出されているわけですね。

……と書いてからググってみたら、既にウィキペディアでも詳細な解説がされています:

■ マクドナルド・コーヒー事件

恥ずかしい話、僕もこの一件は「米国は酷い訴訟社会」を示す格好の例だと思っていました。よく考えてみれば、「コーヒーが膝にかかっただけで3億円」と言われれば何か裏があると感じてしかるべきなのですが、既に持っていたステレオタイプが「そんなバカな話、アメリカならあるかもしれない」という心理状態を作り出してしまっていたのかもしれません。いずれにしても、語られている情報だけに捕われてしまってはいけない、と。

考えてみれば、冒頭の「米国は弁護士が多い」という話も、語られていない情報(言葉の定義や社会的背景)が重要な意味を持っています。あからさまなウソ(事実と異なる情報)を見破るのは意外とたやすいことですが、空白になっている部分に目を向けるのはなかなか難しいものです。誰かが意図的に作り出したフィクションに騙されないためには、「ウソをウソと見抜く」だけでなく、そこにないものを意識する努力も必要なのでしょうね。

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